※参考:一般社団法人 日本補聴器工業会「JapanTrak2022 調査報告」
補聴器購入時に利用可能な補助金・助成金制度の種類
補聴器購入時に利用可能な補助金として、「障害者総合支援法」にもとづく補装具費支給制度が挙げられます。また、自治体によっては独自の支援が受けられるほか、医療費控除が適用される場合があります。それぞれの補助金・助成金制度について見ていきましょう。
障害者総合支援法
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)では、補装具費支給制度を定めています。補聴器も補装具に含まれているため、補聴器購入費用が補助金として支給されるのです。
障害者総合支援法にもとづく補装具費支給制度を利用するには、障害者手帳の交付を受けていることが条件となります。後述する通り、購入する補聴器のタイプに応じて補助金の支給額が決まります。
自治体独自の支援
自治体によっては、補聴器を購入する方に独自の支援を行っていることもあります。支援の内容は自治体によって異なりますが、一般的には高齢者や18歳未満の若年層を対象とした支援策がほとんどです。また、支援を受ける条件として所得の基準を設けている自治体もあります。自治体ごとに支援の有無や支援内容が異なる点が特徴です。
医療費控除
医療費控除とは、一定額以上の医療費を支払った際に医療費の一部が戻ってくる制度です。2018年より補聴器も医療費控除の対象となり、支払った医療費として確定申告することで納税額の軽減や所得税の還付が受けられます。
ただし、医療費控除の対象となるのは、医師などが診療や治療を行う上で補聴器が直接必要と判断した場合に限られます。診療や治療に際して補聴器が必須ではない方は対象とならない点に注意が必要です。
障害者総合支援法による補助金制度を利用するには
ここからは、実際に各種の補助金制度を利用する方法について見ていきましょう。まずは、障害者総合支援法にもとづく補装具費支給制度の対象となる方、申請の流れ、支給される補助金について解説します。
対象となる方
障害者総合支援法にもとづく補装具費支給制度は、聴覚について障害者手帳を交付されている方が対象となります。聴覚障害の等級と、想定される補聴器の種類は下表の通りです。
等級 | 聴力 | 補聴器の種類例 |
---|---|---|
2級(重度難聴) | 両耳とも100dB以上 | 重度難聴用耳かけ型 重度難聴用ポケット型 |
3級(重度難聴) | 両耳とも90dB以上 | |
4級(重度難聴) | 両耳とも80dB以上または 語音明瞭度50%以下 |
高度難聴用耳かけ型 高度難聴用ポケット型 |
6級(重度難聴) | 両耳とも70dB以上または 片耳が90dB以上で他側耳が50dB以上 |
申請の流れ
障害者総合支援法にもとづく補装具支給制度を利用するには、障害者手帳の交付を受けた上で補助金を申請する必要があります。
障害者手帳の交付を受ける流れ
補聴器購入時の補助金申請の流れ
支給される補助金
前述の通り、補装具費支給券を受け取るには補聴器の見積書を提出する必要があります。購入する補聴器の種類によって、補装具費支給券による補助額が決定されるからです。具体的には「補聴器購入基準価格」に応じて補助額が決まります。おおよその目安として、補聴器購入額のうち0〜3割が自己負担になると捉えてください。
補聴器購入基準価格
名称 | 価格 |
---|---|
高度難聴用ポケット型 | 44,000円 |
高度難聴用耳かけ型 | 46,400円 |
重度難聴用ポケット型 | 59,000円 |
重度難聴用耳かけ型 | 71,200円 |
骨伝導式ポケット形 | 74,100円 |
耳あな型(レディメイド) | 92,000円 |
骨導式眼鏡型 | 126,900円 |
耳あな型(オーダーメイド) | 144,900円 |
自治体独自の支援を利用するには
次に、自治体独自の支援について見ていきましょう。対象となる方や利用できる助成が障害者総合支援法とは大きく異なるケースもあるため注意が必要です。
対象となる方
自治体によって補聴器購入に対する支援の有無や対象となる方は異なります。障害者手帳の取得条件に満たない軽度・中度難聴の方も対象となることがある一方で、高齢者や18歳未満の難聴者を対象としているケースも少なくないのが特徴です。
ご自身が住んでいる自治体で支援を行っているかどうかは、自治体のWebサイトで確認するか、直接問い合わせることをおすすめします。
申請の流れ
自治体ごとの支援を受けるための申請方法は、自治体によって異なります。役所の福祉課窓口などに相談の上、申請方法を確認しましょう。
支給される補助金
支給される補助金に関しても、自治体ごとにまちまちです。上限額を設けて補聴器購入費用の一部を助成してもらえるケースや、購入費の1/2など助成割合を定めているケースなどが見られます。また、付属品やメンテナンス代は助成対象外というケースもあるため、条件をよく確認しておく必要があるでしょう。
18歳以上の軽度・中程度難聴者を対象とした助成の例
- 両耳の聴力レベルが40㏈以上、または一側耳70㏈以上
- 他耳35㏈以上
- 身体障害者手帳(聴力障害)の対象外
- 治療による聴力回復の見込みがない
- 申請者および配偶者の市民税所得割46万円未満
- 国が定めた補聴器購入基準額と見積額のいずれか低い額の2/3
- 両耳の聴力レベルが40㏈以上
- 身体障害者手帳(聴力障害)の対象外
- 医師が補聴器の装用が必要と診断している
- 市税を滞納していない
- 40,000円まで
- 付属品も助成対象(両耳で2台も可)
- 修理やメンテナンスは対象外
- 区指定の補聴器相談医籍を有する医師による確認書
- 身体障害者手帳(聴覚障害)が交付されていない
- 住民税非課税 137,000円上限
- 住民税課税 購入費の1/2(68,500円上限)
- 片耳1台分と付属品(電池、充電器、イヤモールド)
- 修理費・メンテナンスは対象外
- 5年経過後は再申請可能
- 両耳の聴力レベルが40㏈以上70㏈未満
- 耳鼻咽喉科医師の意見書
- 身体障害者手帳(聴覚障害)を持っていない
- 住民税非課税世帯、生活保護、中国残留法人等支援給付者
- 25,000円上限
- 補聴器本体及び付属品
- 1人1台1回限り
- 修理、メンテナンスは対象外
- 前年合計所得額が135万円以下
- 耳鼻咽喉科医から補聴器必要性との意見書提出
- 身体障害者手帳(聴覚障害)の対象でない
- 35,000円上限
- 5年経過後は再申請可能
- 本人の合計所得金額が210万円未満
- 障害者手帳(聴力障害)の交付対象外
- 補聴器相談医が補聴器を必要と認める「医師意見書」
- 購入費の1/2(40,000円上限)
- 1人1台
- 障害者総合支援の補聴器支給対象外
- 医師が補聴器の必要性を認めていること
- 住民税非課税であること
- 購入費の1/2(25,000円上限)
- 5年経過すれば再申請可能
医療費控除を利用するには
最後に、補聴器の購入に際して医療費控除を利用する方法について解説します。医療費控除は補聴器に限らず、支払った医療費が戻ってくる制度です。医療費控除の対象となる方や申請の流れ、適用される控除について見ていきましょう。
対象となる方
補聴器の購入費が医療費控除の対象となるのは、「補聴器が診療等のために直接必要である旨を証明できる」などの条件を満たした場合に限られます。
たとえば、医師から補聴器の装用が必要と診断されたのではなく、本人が聞こえにくいと感じて補聴器を購入した場合などは、医療費控除の対象にはなりません。補聴器の購入費がすべて医療費控除の対象となるわけではない点に注意してください。
申請の流れ
補聴器の購入費について、医療費控除を申請する際の流れは次の通りです。
つまり、医師による診療情報提供書の作成・認定補聴器専門店での購入・確定申告の3つが必須となります。
申請の流れ
補聴器の購入費に限らず、医療費控除の対象となるのは10万円を超えた部分です。総所得金額等が200万円未満の方の場合、医療費控除は総所得金額の5%となります。
一般的に補聴器の購入費は1台あたり10万円を超えるケースが多いことから、医療費控除の対象となる可能性が高いでしょう。医療費控除を申請することにより、納税すべき税金額の軽減や払いすぎていた所得税の還付を受けられます。
まとめ
補聴器購入時に使える補助金制度として、障害者総合支援法・自治体独自の支援・医療費控除の3つを紹介しました。補聴器は高額な医療機器のため、購入時の出費が家計の負担となることも十分に考えられます。今回紹介した補助金などの制度を活用して、補聴器購入に伴う経済的な負担の軽減を図ってみてはいかがでしょうか。
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